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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第25章 第十一話 【螢ヶ原】  其の壱
 というのも、甚平店には亡くなった母お絹の尽きせぬ想い出あるからだ。夜泣き蕎麦屋をしていた母は滅法人が好くて、いつも他人のために奔走していた。父は母をこよなく愛し、他の男に犯されて身ごもった母を女房とし、生まれたお彩をも実子として慈しみ育ててくれた。
―一生にたった一度で良い、心に花を、自分だけの花を咲かせるんだよ。
 それが口癖だった母、その母に惚れて惚れ抜いた父、二人ともにお彩にとっては大切な両親であった。
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