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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第25章 第十一話 【螢ヶ原】  其の壱
 人妻となってから、更に若々しい匂いやかさが際立つようで、これまでにはない色香さえ漂うようになった。だが、その美しい顔は濃い翳りに彩られていて、まなざしの暗さが気になった。
 今のお彩を見て、到底、幸せな結婚生活を送っているようには見えない。漸く上がり込んだお彩は、固く唇を噛んでうつむいている。
 伊勢次はできるだけ穏やかな声音で言った。
「何かよほどの事情があるんだと察しはつくが、もし良かったら、話してくれねえか」
 お彩がハッと弾かれたように面を上げた。
 刹那、伊勢次と視線が合い、狼狽えたように素早く顔を伏せた。
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