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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第27章 第十一話 【螢ヶ原】  其の参 
この言葉を耳にした時、お彩は相当の衝撃を受けた。心では、伊勢次の負担になりたくないと思いながら、現実には、お彩は伊勢次にとって眼には見えない足枷となっている。
 伊勢次はむろん、他人にお彩の腹の子が自分の種ではないと否定するはずもなく、このままでは、伊勢次は自ずとお彩を腹の子ごと受け容れなければなくなってしまう。そのことは、お彩が最も怖れていたことでもある。
 伊勢次との生活は、春の陽だまりに包み込まれているようで、心地良い。伊勢次の傍にいると、安らげる。このままずっと、伊勢次の傍にいられたなら、こんなに幸せなことはない。
 そう思う傍らで、このままで良いはずがない、伊勢次の優しさにすべて甘えて、うやむやの中に伊勢次に生涯重荷を背負わせることになってはならない、そう思う自分がいる。
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