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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第28章 第十一話 【螢ヶ原】  其の四 
【其の四】

 お彩は、ゆっくりと歩きながら空を見上げた。今日も八月の空には綿のような巨大な入道雲がひろがり、夏の太陽が容赦なく地上を灼いている。この江戸から少し離れた小さな村に住むようになって、はや二月(ふたつき)が経過していた。
 お彩は妊娠八カ月を迎え、いよいよ大きく前方へと突き出した腹とこの酷暑をいささか持て余し気味である。歩くどころか、床の中で寝返り一つ打つのさえ億劫な有り様だ。
 伊勢次は腹の大きくなったお彩を気遣い、労ってくれる。
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