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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第4章 第二話【花影】-其の壱-
 お彩がここまで考えられることができるようになったのは、やはり彼女の心的成長のゆえだろう。父への想いが何であるかを確かめ得た今、お彩は一つの大きな試練を乗り越えたのである。そして、その陰に、あの謎の男の存在が拘わっていることもまた、確かな事実であった。
 逆に言えば、男が現れたことによって、お彩は父への想いが単なる憧れであり、自分があの男に惹かれている―男への想いこそが恋であることに気付いたのだ。
 お彩は深呼吸すると、覚悟を決めた。思い切って腰高障子に手をかけた。木戸口を抜けて真っすぐいった突き当たり、つまり最奥の部屋がお彩の生い立った懐かしい我が家であった。何と声をかけたら良いものかも判らず、お彩は細く障子戸を開けた。
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