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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第28章 第十一話 【螢ヶ原】  其の四 
 その時初めて、お彩の中に嫌な予感が湧き上がった。
先夜、伊勢次と共に二人で夕餉を取ったときの伊勢次の台詞がまざまざと耳奧に蘇った。
 何を思ったか、突如として、箸を置いた伊勢次がお彩を見つめた。
―俺ァ、幸せだったぜ、お彩ちゃん。
―え?
 と、問い返すと、伊勢次は破顔した。
―お彩ちゃんとたったの短い間でも、こうして夫婦として暮らせることができた。俺にとっちゃア、これまで生きてきた中で最高に幸せなときだったよ。
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