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第28章 第十一話　【螢ヶ原】　　其の四　

　伊勢次が黙したまま逝ってしまった今、彼の死の原因を窺い知ることはできない。しかし、お彩には、伊勢次の死が自害である以上、その原因に自分が拘わっているとしか考えられなかった。
　とりわけ、伊勢次の最近の心ここにあらずといった体は、伊勢次が入水を図るほど追いつめられていたことを示している。
　もしやと、お彩は愕然とした。
　伊勢次はお彩の本心をとうに見抜いていたのではないか。
　そんな気がした。お彩にしてみれば、つとめて表に出さないようにしていると思い、伊勢次に気付かれてはいないと思い込んでいたけれど、現実はどうだったのだろう。伊勢次は、おっとりとした明るい外見に似合わず、勘が鋭かった。