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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第28章 第十一話 【螢ヶ原】 其の四
遺書の代わりに発見されたのは、江戸から伊勢次に宛ててよこされた一通の書状であった。その手紙は、伊勢次の母親おきわからのもので、半年後には小石川養生所を出なければならなくなったことが綴られ、心細いので倅に江戸に帰ってきて欲しいと訴えていた。
その手紙は、伊勢次がお彩に最後まで見せようとしなかったものに相違なかった。その伊勢次の母からの便りを検分後、村役人から返された時、お彩は烈しい衝撃を受けた。
伊勢次には本来、守るべきものがあったのだ―。それは、お彩やお彩の子どもではなく、伊勢次が心から大切に思っていた義母おきわであった。そのおきわから、お彩はたった一人の息子を奪ってしまった。
その手紙は、伊勢次がお彩に最後まで見せようとしなかったものに相違なかった。その伊勢次の母からの便りを検分後、村役人から返された時、お彩は烈しい衝撃を受けた。
伊勢次には本来、守るべきものがあったのだ―。それは、お彩やお彩の子どもではなく、伊勢次が心から大切に思っていた義母おきわであった。そのおきわから、お彩はたった一人の息子を奪ってしまった。