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Memory of Night 番外編
第4章 Episode of AKIRA
「この店でもイチ押しの一級品ですからねー」
叔父は誇らしげな顔で、うっとりと人形を眺めた。
「その分値も張りますが」
「そうですよねー」
付け加えるように言う叔父に、母も苦笑する。
もともと着物を集めるのが趣味だった母親には、人形の顔立ちよりもその人形が纏う赤い着物の方が気になるようだった。
「ねえ、晃もこの人形を気に入ったの?」
「え?」
母は瞳を覗き込んでくる。
今ならねだれば買ってくれるかもしれないし、もしかしたら、母自体がこの日本人形を欲しいと思っているのかもしれない。
頷いたら手に入るかも、という誘惑はあったが、晃は首を横に振った。
さすがに今までのものとは、金額の桁が違いすぎる気がしたのだ。
「……晃は男の子だもんね。人形にはあんまり興味ない、か」
残念そうに母はそうつぶやいた。
晃は後ろ髪を引かれる思いでその場を後にした。
それからはまた今まで通りの物欲を持て余す日々に戻り、次第にあの人形のことは頭から追いやられていった。
けれども完璧には消えない。どうしようもなく惹かれたあの一瞬の感覚だけは、心の片隅でくすぶっていた。