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Memory of Night 番外編
第4章 Episode of AKIRA
(欲しい……)
不思議な感覚だった。湧き上がる衝動のまま冷たいガラスに両手を添え、背伸びをして人形を眺めていた。ほとんど無意識のうちに。
無機質で無表情な瞳に、知らぬ間に魅せられていた。
「晃?」
ふいに後ろで声がして、はっとした晃は慌ててガラスから離れた。
親戚の店に来ていることを思い出したのだ。身を乗り出すような真似をして、はしたなかったかもしれない。
振り向くと、そこには母と叔父がいた。
怒られるかと一瞬思ったが、予想に反して叔父はにこやかだった。
「この人形を気に入るとは、なかなかお目が高いな晃くんは。将来有望な目利きになるんじゃないか?」
「……目利き?」
「いいものとそうでないものを見分けることができる人のことだよ」
叔父は声をあげて笑った。
もともと穏やかな細い垂れ目がさらに細められ、まなじりには皺が寄る。温和な性格が具現化したような叔父の顔を、晃は嫌いではなかった。
「本当に、美しい人形ですね。見ていて惚れぼれしてしまうわ」
晃の母もガラスに片手をそえて、その人形を眺めていた。