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Memory of Night 番外編
第4章 Episode of AKIRA
「――色恋絡みで苦い経験ていったら、当てはまるのはそれだろうな」
晃は視線を下げたまま、ぽつりと言った。
変わらず、店内のBGMは静かに響き続けている。曲名もわからないオルゴールのようなメロディーだ。
音といえばそれだけ。傍らにいる宵も、黙って晃の話を聞いていた。
「彼女にフられても、悲しいとは思わなかった」
走り去っていく後ろ姿を視界で捉えた時に感じたのは、彼女の思いの純真さと、それに気付けなかった自分の愚かさ。そしてそれに比例した、彼女に対しての後ろめたさや罪悪感だけだ。
「……別に遊びのつもりはなかった。その子とも、もちろん他の子とも。だけど、恋愛とはとても呼べない付き合い方ばかりだったのは確かだ。付き合ってきた子たちへの気持ちは、物欲と変わらなかったからな。欲しいと思っても、手に入れた瞬間に飽きてしまう」
その中で彼女が少しだけ特別だったのは、今まで一緒にいた誰よりも欲がなくて健気なところ。
真っ直ぐに見つめてくる黒塗りの瞳は、悲しげで綺麗だった。
罵声一つ残さずに走り去った彼女に、心が痛んだだけだ。