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Memory of Night 番外編
第4章 Episode of AKIRA
隣にいる女子達も、一瞬目を奪われたらしい。
ふと我に返った一人が言った。
「あの子、多分西中の子だよー」
「知ってんの?」
「うん、部活の練習試合に行った時に見たことある」
呆然と立ちつくしたまま、女子達のやり取りは続く。
「綺麗な子、女の子みたーい……」
素直な感想だったのだろう。
ぽつりとつぶやいた女子の言葉に、他の女生徒たちも頷く。
それから慌てて晃へと向き直った。
「あ、でもっ私は晃くん一筋だからねー!」
「あたしもー!」
「いっぱい遊んでねー!」
取り繕ったような声も、語尾を甘くしたねだるような口調も晃の耳には届かなかった。
晃の瞳に映るのは漆黒の髪の少年だけ。
ずっと眺めていたかった。
以前見た人形と同じように、ガラスのケースに閉じ込めて、手元に置いて飾りたてて。
今改めて振り返れば、その時の感情もまだ物欲の延長だったのかもしれない。恋ではなく、独占欲。
けれども強く惹かれたことに変わりはなかった。
――欲しいと思った。初めて本気で。
クラスは離れ、彼との接点はないまま晃は二年生になる。
初めて言葉を交わしたきっかけは、夏休み前にふいに覗いた理科準備室での出来事だった。
物欲から恋愛感情へ。独占欲から愛しさへ。
ゆっくりと変化していく自身の気持ちに気付くのは、まだしばらく先の話だ――。