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Memory of Night 番外編
第3章 熱々、バレンタインデー!
「夜景?」
晃はゆっくりとビルに向かって歩きながら、軽く頷いてみせた。
自動ドアをくぐり抜けると、すぐエレベーターが見える。
それに乗り込み屋上の『展望室』と書かれたボタンを押した。
「宵って人混み嫌いだろ? 祭の時言ってたもんな。今日はどこ遊びに出かけても多分人多いから、どうしようか迷ったんだけど、ここならあんまりいないかなって思って」
確かに、と思う。
こういう恋人向けのイベントの日に市役所を訪れる物好きもなかなかいないだろう。
こんな日は、おそらく街中やショッピングモール、イルミネーションが有名な場所に、みんな集まる。
「……別にどこだって良かったのに」
宵はつい呟いてしまい、可愛い気のない自分の言い草にはっとする。
そういう意味で言ったわけではなかった。
ただ、晃と一緒にいられるのなら多少の人混みも我慢できたし、いつものように晃とまったり部屋で過ごすだけでも充分だったと言いたかっただけだ。
「まあまあ、そう言うなよ。宵も絶対気に入るはずだから」
エレベーターが、ようやく止まる。
ドアが開くのとほぼ同時に、晃は囁いた。
「――ここから一望できる景色は最高だよ」