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短編集 ~書いてみたくなったので、書いてみました
第2章 タンザナイトの瞳
 気が付くと、いつもタンザナイトの瞳がわたしを見つめていた。
 それは、わたしが物心つく前から続いていたようで。
 わたしは、不思議と怖いと思ったことがなかった。
 だって、わたしを慈しむような眼差しだったから。
 暖かくて優しいタンザナイトの瞳ーーーーー。




 漸くタンザナイトの瞳を探してみようと思ったのは、大学を卒業して社会人になってから。
 でも、なかなか見付からなくて、泣きたくなったことも多々あった。
 どこに行けば出会えるのか、どこからわたしを見ているのか、皆目分からなかった。

「あなたは、どこにいるのっ?探しているのにっ。お願い、わたしと会って‼」

 呼べど叫べど返ってくる言葉は一切なく、わたしの言葉が宙に舞うだけだった。


 どれだけ探したのかわからなくなった頃、漸く見つけた。タンザナイトの瞳をーーーーー。
「やっと会ってくれた。もうどこにも行かないで。わたしの傍にいて。」
 わたしがそう言うと、あなたは、にっこりと笑って頷いてくれた。





「あのコ、まだ若いのに可哀想にね。」
「事故で両親とご主人とお子さんをいっぺんに亡くしたんですってね。」
「ええ。それに頼れる親戚もないそうよ。」
「そうなの?それで現実を受け入れられなくて、空想の世界に逃げ込んじゃったのね。」
「そうそう。でも彼女にとって、現実と空想の狭間にいるのは、幸せなことなのかもしれないわね。」
「ほら、今もご家族の形見のタンザナイトの指環を見つめながら、幸せそうに微笑んでる。」





 今、わたしは、タンザナイトの瞳の人と一緒にいる。
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