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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第3章
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本来ならばサックスがいる筈だが、そこはヴィヴィがヴァイオリンでカバーするという、バンド構成だ。
クリスがハイノートで主旋律を謳い上げると、ヴィヴィが負けじと喰らい付き、旋律を乗っ取る。
そして匠海のピアノという、抜群の刺色。
そこへ今まで渋く低音で支えていた父のグレゴリーが、
「It's my turn ――そろそろ俺の番だぜ」とでも言わんばかりにアドリブを利かせ、痺れそうなソロを聴かせる。
そのチョイ悪オヤジぶりに、双子はそっくりな顔を見合わせ、オーバーに両肩を上げてみせた。
「Yes、Everybody come'n!!」
父のお許しを得て、兄弟達が主旋律を奪い返す。
そのまま一気にラストまでなだれ込み、セッションは終了した。
「You're so crazy, you know!?――お前ら、クレイジー過ぎっ!」
白い歯を見せて爆笑する父に、皆もつられて吹き出す。
「だってクリスばっかり、いいとこ持っていこうとするんだもの!」
弓を持った腕をぶんぶん振り回し、子供っぽく抗議するヴィヴィと、
知らん顔をしてトランペットの手入れをするクリスに、傍に控えていた執事達が顔を見合わせて苦笑する。
「まあまあ。じゃあ、次はね――」
「奥様」
譜面を捲って次の曲を決めようとした母を、家令(使用人の長)がすかさず止める。
「なあに?」
「夕食の時間でございます。もう15分もスケジュールが押していますので、そろそろ」
慇懃に言い渡した家令に、皆は一瞬、楽しい玩具を取り上げられた子供の様に、しゅんとした。
その様子に匠海は心の中で「似た者家族」と突っ込み、苦笑する。
「あ~あ、楽しい時間が過ぎるのは早いな。さあ、ディナー、ディナー」
空気を変えるように父が声を上げると、それぞれ楽器をしまい、ダイニングルームへと向かった。
皆が3メートル超の長いダイニングテーブルについても、そこには1つ空席があった。
母ジュリアンの席だ。
「おや、ジュリアンは?」
疑問を口にした父に、クリスが答える。
「マム、今月からまた1人、生徒が増えて、練習時間、早まったんだ……」
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