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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第114章 ★★2015年 バレンタイン企画★★

 運良く(?)篠宮家の男性陣の中で、腹を下したのは朝比奈だけで。

 それでも翌日には しゃんと仕事場に立つ執事は、

 目の前で宿題と格闘する双子に瞳を細めていた。



 双子の主の成長を、一番近くで見守りサポート出来る。

 こんなに素晴らしい仕事、他では味わえないのでは無いだろうか。


 例えそれが、自分の出会いや婚期を遅らせるものでも。

 少なくとも己は、お2人に奉仕する日々に、限りない喜びと やりがいを感じているのだ。


 だから今。

 自分はフランスの両親に、自信を持って言える。



「これが、私の天職なのです」

 ――と。



「朝比奈、どうしたの?」

 難題に頭を抱えていたヴィヴィが、笑んでいる執事を不思議そうに見つめていた。

「ええ。ヴィクトリア様、大好きですよ」

「うふふ~~、ありがとう♡」

 向けられる親愛の情を、すんなり受け入れるヴィヴィは、本当に純粋で愛らしく。

「クリス様も、大好きですよ」

 妹に続き、己の執事に にっこり微笑まれたクリスはと言えば、

「……恥ずか、しい……っ」

 そこは やはり年頃の男の子。

 こそばゆそうに身を攀じると、羞恥に灰色の瞳を彷徨わせていた。

「あはは!」

 思わず零れた笑い声に、ヴィヴィも声を上げて笑う。

 そんな他愛もない日常が、堪らなく愛おしく、幸せだ。





 これから何度、バレンタインに腹を下すかは知らないが。

 そんな想い出すらも きっと、

 掛け替えの無い “宝物” となる――




 そう、しみじみと確信した、

 朝比奈 純也

 29歳のバレンタイン(翌日)――なのであった。








★★2015年 バレンタイン企画★★
≪了≫



朝比奈「私めの半生に目を通して頂き恐縮でございます」

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