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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章

ウェッジソールのサンダルで、てくてくその後を追うヴィヴィ。
今日は屋敷に直接戻るだけなので、迎えの車は断り、双子は200mの道のりを歩き始めた。
ほとんどが一方通行で、住宅地特有の静かな道路。
ぽつぽつと先程教授に質問した事の経過を喋ってくれるクリスに、ヴィヴィは短い相槌を返す。
「ヴィヴィ……、なんか、あった……?」
「何もないよ。ただ、暑かっただけ」
にこりと微笑んだヴィヴィは、「カバン重かったから、楽ちん~」と喜び。
照り付ける夏の太陽でゆらゆらと陽炎を昇らせる道を、軽い足取りで屋敷へと戻ったのだった。
残る4日間の試験に向けて勉強をしたヴィヴィは、リンクで転びまくっていた。
特に、ルッツとフリップの着氷率が、格段に下がっていて。
コーチとサブコーチは、こんな時に限ってペアの下城・成田組に掛かりっきりで、頼る訳にはいかない。
出来る限り自分で調子を取り戻そうと、1回転から注意事項を確認しながら何度も飛んでみる。
フィギュアのジャンプは、助走 → 踏み切り → 回転 → 着氷と大きく4つの流れに分けられる。
難易度はトウループ → サルコウ → ループ → フリップ → ルッツ → アクセル の順で基礎点も上がる。
ヴィヴィが一番得意なのはアクセルで、若干 苦手意識があるのがフリップとルッツ。
特に今シーズンは、SPでヴィヴィにとって初の試みとなる、ジャンプの基礎点が1.1倍となる演技後半にジャンプを固める構成で、その中にルッツも組み込んでいた。
「……はぁ……」
大きく息を吐き出したヴィヴィは、纏っていたラベンダー色のトップスを脱ぎ、キャミソール姿になると、手袋に包まれた両手でべちんと頬を打つ。
(もう、大学生なんだし……。シニア上がって4年目なんだし……。周りに頼ってばかりじゃなく、自分で何とかしたいんだけど……)
一括りにした金色の頭をぐるりと回すと、またリンクへと駆け出していく。
左足のアウト(外側)エッジに乗るバックでの助走は、十分にスピードもある。
踏み切りで右のトウを突く瞬間、背筋を使って大きく跳び上がり、手も大きく振り上げて締めていくのを意識する。
けれど――、

