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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第114章 ★★2015年 バレンタイン企画★★

「クリス~、あの朝比奈の絵、どうするの~?」

 朝比奈から身体を離したヴィヴィが、彼女と同じ背格好のクリスの顔を覗き込む。

「……飾る……?」

 あの情けないポーズの絵を、一体どこの壁に飾るというのだろう。

「じゃ~、玄関は~?」

「……応接室、は……?」

 3歳児が描いたとは思えぬ、被写体の特徴を的確に捉えたクリスの絵。

 あれを客人の目に付く場所に、飾ろうというのか……orz

 双子に からかわれ、がっくり肩を落としながらも、朝比奈はヴィヴィの観察眼に内心舌を巻いていた。



 賑やかな自分ばかりに目を向けず、双子を平等に観られる人材かどうか。

 わざと我が儘を演じ、ちゃんと大人2人を試していたのだ。

 たった3歳の女の子が――



 そして、クリスも。

 真っ直ぐ そして 根気良く、自分と向き合ってくれる大人を、

 彼も彼なりに無意識の内に選別していた。



クリス「朝比奈の名刺……顔写真、これにすれば……」

ヴィヴィ「メイシ? なあに、それ?」

クリス「初めて会う人にわたす、自分の事が書いてあるカード……」

ヴィヴィ「メイシ! それにしよ、朝比奈のメイシ!」

朝比奈「………………」



 うん。

 おそらく、たぶん――



 双子の悪巧みをどう回避しようか、悩み始めた その時。

「失礼します」

 扉の開閉音と共に良く通る子供の声が、広い部屋に響いた。

 その途端、ぱっと声のした方向を振り返った双子。

 中でも、ヴィヴィの変貌ぶりは驚くほどのもので。

「……っ おにぃちゃまぁ~~っ」

 「クリスを守らなければ」という無意識の使命感が漲っていた灰色の瞳が、

 途端に甘えん坊全開の それに変貌した。

 一目散に駆け寄ったヴィヴィに、小学生らしい男児は半ズボンから覗いた膝に両手を付き、にっこり微笑む。

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