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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第114章 ★★2015年 バレンタイン企画★★


 五十嵐に呼ばれ、就労の意思を確認された朝比奈は、躊躇うこと無く了承した。


 早速、使用人の面々にも紹介され。

 ソムリエや秘書経験者など――是非 教えを請いたい素晴らしい人材の宝庫に、

 この篠宮邸を一手に取り仕切る、家令の手腕も垣間見えた。


「朝比奈 純也です。さっそく お坊ちゃま お嬢ちゃまに玩具にされてしまいました。

 若造で まだまだ未経験の事も多いですが、宜しくご教示下さいませ」
 
 自虐ネタを入れつつ、初の職場となる篠宮家で挨拶をした朝比奈。

 その表情には、執事としての初仕事への気合いと、日本での生活への期待が、ありありと浮かんでいた。

(これは、とても面白い職場になりそうです――)





 しかし、その1週間後――



 フランスから送った荷物も片付き、

「よし! 本日が執事としての初出勤です!!」

 常は “熱血” とは程遠い朝比奈が、篠宮邸に与えられた半地下・1LDKの自室で気合を入れたのに。

 なのに。

 職場となる階上フロアへ、足を踏み入れた瞬間。

 世にいう “フレッシュマン・朝比奈” を待ち構えていたのは、

 絶賛 “我が儘 大暴走中” のヴィヴィによる洗礼――だった。


「さあ、お嬢様。お着替えしましょうね」

「イヤっ」

「え? では、先に顔を洗っちゃいましょうか」

「イヤっ!」

「……。では、顔をお拭きしましょうか?」

「イヤっ!!」

「………………」


 寝起きが悪いのだろうか?

 何をするにも「イヤ」しか言わない幼女を抱っこしつつ、とりあえず隣のクリスの部屋へ。


「クリス様。朝ですよ」

「………………」

「朝ですよ。起きましょうね」

「………………」

「……本日はお天道様がサンサンで、お外で遊ぶと気持ちいいですよ」

「………………」


(ピクリともしやがらねえ……っ 壊)

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