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桜舞うあの日のままで
第1章 プロローグ
 人影のまばらな駅のホームにてひとり、風香(ふうか)は電車を待っていた。

 3月末の心地よいそよ風が、ワンピースの裾をかすかに揺らしている。

 線路からさほど離れていないところには、桜の木々が立ち並んでおり、花びらが風に舞っていた。

 天気予報によると、既に満開の時期は過ぎ去ったらしかったが、そんなことを感じさせないほど鮮やかに咲き誇っている。

 目を細めて、その光景に見とれる風香。

 風に舞い散る桜の花びらを眺めながら、風香は忘れえぬ想い出に浸っていた。

 幼なじみの悠(ゆう)の部屋から一緒に眺めた桜のことや、桜の花びらが舞い散る中を歩き去っていってしまった悠の広い背中を。




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