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ブルジョアの愛人
第15章 主菜は食前酒のあとに

それから三十分ほど、他愛のない話をぽつりぽつりとした。好きな俳優に女優の彼女ができたことや、担任の悪口、莉菜のことなど。

真緒は莉菜をことのほか心配していた。彼女はちゃんと別れを切り出せるのか、と。真緒や樹里とは対照的に気の弱い子だから、優々も心配である。

しかし、やはり真緒の口から莉菜の名を出されると複雑な気持ちになる。真緒と莉菜は一年以上一緒にいるから、仕方ないといえば仕方ないのだが。

「そういえば、最近青木さん変だよね」

ふと気づいたように真緒が切り出した。

「なんか、仲間外れにされてるっていうかいつも一人でいるよね。何かあったのかな」

「あのね」真緒は声を潜めた。「青木さんのお父さんと莉菜が付き合ってるのがバレたらしいよ」

驚いて大声を出しそうになった。まさか。なぜバレたのか。生徒が知っているということは、大人も知っているということだ。もしそれが警察の耳に入れば――

「青木さんのお父さん…」

「逮捕されて、会社もダメになるだろうね」

真緒も同じことを考えていたようだ。継いだ言葉の「ダメになる」が何を意味し、その結果樹里がどうなるのかは小学生の二人にも想像に難くなかった。
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