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ブルジョアの愛人
第15章 主菜は食前酒のあとに

それから暫く沈黙が続いた。何も言えないのだ。浩晃や樹里がこの場にいるわけでもないのに、大変だよね、などと他人事のように言って締めくくるのはなぜか気が引けるのだ。

すると、急に優々が頬を紅潮させ、そわそわし始めた。

「でも、莉菜ちゃん、しちゃったんだよね、青木さんのお父さんと…」

何を、と訊かなくても、すぐに分かった。真緒は渋い顔で頷く。

「真緒ちゃんは、そういうこと、興味ある…?」

上目遣いに、ちらちら真緒の表情を伺う。普段ならこんなことは訊けない。だが、お泊まり、その上真緒の部屋で二人きりという非日常的なシチュエーションが優々に思い切らせるきっかけとなったのだ。

「そりゃ、あるよ」

真緒は案外あっさり答えた。

「もう小五だもん。中学生になったら大体みんな初体験済ませるじゃん? その中学生まで、あと二年ぐらいだし…優々ちゃん? どうかした?」

あまりの衝撃に、優々は真緒を見つめたまま固まってしまっていた。まだ小学生なのにエッチなことを考えてしまう自分はおかしいのだと思っていた。

しかし、真緒はそんなことで悩んではいなかったのだ。それどころか、ほとんど開き直っている。これが"普通"なのだろうか。
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