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ブルジョアの愛人
第2章 秘密の花園

莉菜は虚しさと切なさと心細さで一杯だった。また浩晃と逢えない一週間が始まると思うと、酷く重い積乱雲が胸に立ち込める。莉菜の心は曇り。NHKより正確な天気予報だ。

莉菜の家の前に着いてから、バイバイを言えないまま三十分が過ぎようとしていた。浩晃も、莉菜程別れるのを躊躇っているわけではないが、莉菜の迷う表情を見ると軽く手を振ることもできない。

カーステレオの液晶画面のデジタル時計は、間もなく午前三時に変わろうとしている。そろそろ莉菜にかけられた魔法もタイムアップだ。莉菜は意を決して、車のドアに手を掛けた。

「またね」

か細く掠れた声が、莉菜の決心を浩晃に強く感じさせた。浩晃も寂しさをぐっと堪え、またねとオウム返しのように返事をする。

生温い闇にぼんやりと浮かぶ浩晃の表情が莉菜の心を少し揺るがせたが、莉菜は何とか心の余震を自らの手で止め、浩晃の車を降りた。
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