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あの子のとりこ
第2章 長い夜

タクシーは駅から10分くらいのマンションで止まった。



「ーさ、入って。」

震える身体をそっと支えながら部屋の中へ促し、ソファーへ座らせた。


部屋の中にはパソコンデスクにテレビ、大きな本棚がある。他に目立つ物もなく、キチッとしないと気が済まない恭一らしいシンプルな内装だ。


「服はこっちで洗うから、風呂へ入ってこい」

「うん…」

言われるがまま、バスルームへ案内された。


パタンー…

バスタブには湯が張られており、ナナミは全身の土埃をシャワーで流してから入った。


(暖かい…)
さっきまで震えていた身体に染み渡る。


「恭ちゃんに迷惑かけちゃったな…」

恥ずかしさと後悔にに大きなため息がでる。



「ナナミ?」

「!」
ドキッ
突然扉越しに、恭一が声を掛けてきた。


「大丈夫か?」

ナナミの心臓が飛び出るほどドキドキと脈打つ。

「ぅ…ん!大丈夫!もう少ししたら出ます」


「ゆっくりでいいよ、ナナミの服すぐ乾きそうにないから僕のだけど…着替え置いとく。」


足音はすぐに遠のいていった。


(どうしよ、恭ちゃんの声にドキドキする〜…)

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