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あの子のとりこ
第3章 兄と妹


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帰宅後、ナナミのアパートに同行した恭一は唖然としていた。


「…まさかここに住んでたのか?」

「…はい」
築60年…木造建築…風呂なし。
見るからに年季が入っている。


中に入ると薄暗い電灯がいくつか光っていた。足元は木の板で補修した箇所が所々あり、歩くと今にも床が抜けそうに軋む。


恭一は沈黙したままナナミの部屋を開けた。

「とりあえず、今必要な物だけ運ぶよ。荷物まとめて」

その言葉の一言、一言が重たい。

(ぜ…絶対怒ってるな、これは…)


そう思いながら、バックに荷物を詰め始めた。



「ナナミ」

「…ん!」

振り向きざまに唇に人差し指を押し当て、声を出すなと合図した。


ドカッッ!!!


突然恭一は部屋の薄い壁に右脚で思いっきり蹴りをいれた。

(恭ちゃん!なんてことを!!)


「…人の家を覗くのが趣味なんですか?」


一撃で穴の空いたところに隣りの大学生が青ざめた表情で佇んでいた。


「住居侵入罪」

ビクッ

「窃盗罪、未成年強姦未遂、盗撮…」


「ど、どこにそんな証拠があるんだよっ!」


「シラを切るおつもりで…?」


恭一は虫を見るような目付きで見据えていた。
その一時的な沈黙に男からは尋常ではない汗が噴き出している。



「す、すぃませんでしたぁぁ〜〜!!俺が下着とったり、部屋を覗いたりしてましたぁぁ〜〜!!」


「…よろしい。ではこの穴の修理はそちらの方でよろしくお願いします。彼女は今日で引っ越すので。」


胸ポケからボイスレコーダーを取り出し、それを見た男は更に肩を震わせた。



「短い間でしたが、大変お世話になりました。」
そう言うとニッコリ微笑み、男からは恐怖で悲鳴とすすり泣く声が聞こえた。


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