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あの子のとりこ
第3章 兄と妹

恭一side


帰りは僕の部屋に着くまで、二人共無言だった。


部屋に着いて先に口を開いたのは僕の方だ。


「…家の親からの仕送りを使わなかったのか?」


ナナミの高校入学前に僕の両親から彼女がアパートで一人暮らしをしたいと懇願され、仕方なく許可を出した話しは聞いていた。

まさかあんなところに住んでたとは…
女の子1人で暮らすには危険だし、部屋も必要最低限のものしか置いてなかった。


「うん…、今まで貯めたお金もあるし、落ち着いたらバイトしようとも思ってたし…」


彼女らしい返答だ。ナナミは成績面も優秀な方だから奨学金制度も受け、僕の両親に迷惑かけたくなかったのだろう。


「ごめんなさい…恭一兄ちゃん。迷惑かけちゃって」



うつむいたまま、今にも泣き出しそうだ。


「…その腕の痣、どうした?」


パーカーの袖がめくれて、腕には内出血の跡がある。

「あ…昨日さっきの大学生に腕を掴まれた時の…」


ドクン
一瞬、脳裏に襲われかけたナナミがよぎった。


想像しただけで頭に血が昇る。


鼓動が脈を打って、頭にガンガン響く。


気がつけば僕はナナミをソファーへ押し倒していた。


「恭ちゃ…!」


両腕を拘束したまま、ナナミの口内へ舌を浸入させた。


「ん…ぅん…」

唇を重ねただけでも動悸は更に激しくなり、今にも眩暈を起こしそうだ。

クチュ…クチュ…


少し深いキスをしただけで、ナナミの目はウルウルする。
唇は厭らしく紅く腫れてくる。



「…はぁ…あいつにどこ触られたの?」

「……触られてない…!腕を掴まれただけ…ん…」



ダメだ。

僕以外に触るのは、許さないー


理性が効かない…


もっと奥へ触れたい…




「恭…兄ちゃ…」


名前を呼ばれハッと我に帰った。
目の端には滲んだ涙が見える。


「ごめん…」


ナナミはずるい。

僕に怒られる時は必ず「兄ちゃん」をつける。


その言葉が僕の欲望に歯止めをかける。


きっと無意識の攻防なんだろうけど…

ずるいよ…

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