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あの子のとりこ
第4章 同居人

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「ほぉ…年上の幼馴染に告白されたーと」


「素敵じゃない!ナナミはなんて返事したの?!」

バレるわけにはいかないので名前は伏せた。
榎本とエリカは身を乗り出して、続きをせがむようにナナミに詰め寄る。




「それが…まだ」

「なんで!?ナナミは好きじゃないの?」



「…お兄ちゃんの好きと恋愛対象の好きがわからないとか?」



「はい…。急にいろんな事がありすぎて、混乱してて…」



それまでニコニコ笑っていた榎本の顔が真顔になった。

「それは相手に対して答えになってないよ。佐野の為に行動してる彼の事、佐野はなんとも思わないの?」



「なんともだなんて…」



「今までの関係を壊したらもう元には戻れないだろうから、彼は佐野に告白するのかなり勇気がいったんじゃないかな。彼の事を想うんなら佐野も逃げないで誠意を見せないと。その返事が良くても、悪くても待ってる方が辛いと俺は思うな」



(そうだ…自分の事ばかりで、あたしは逃げていたのかもしれない。)




「榎本先生…実は何者なんですか?」

「ハハハ〜恋愛相談ならこの愛の伝道師にまっかせ〜なさい!」

恋バナに盛り上がる2人を見ながらナナミは考えていた。



恭一兄ちゃんがあの日家を出てから、ぽっかり穴が空いたようだった。


おじさん達も職員の人達も、施設のみんなもいつも優しかったけど、どこか足りない気分で毎日過ごしていた。


そんな気分を紛らわすように、気がつけば学校以外は暇さえあれば勉強漬けになってた。


中学3に上がった頃に、おばさんから恭ちゃんが学校の先生になった事を聞いて、初めて目標が出来た。


いつか恭ちゃんと同じ教師になるんだって。



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