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あの子のとりこ
第6章 誤解


呼吸も安定してきてた頃、榎本もタクシーを呼び帰っていった。

外はだいぶ明るくなり朝日が顔を出し始める。



「……な…ナミ?」


「体調どう?気持ち悪く無い??」

「ん…少し頭痛があるかな」


安心からか、涙がポロポロ溢れだす。それを見つからないように恭一に背を向けた。


「ナナミ?」


榎本からは恭一がドラックを飲まされた事を聞いていた。

「あたしなんかどうなってもいいよ!…だから恭ちゃんが苦しむ事ない!」


想像しただけで、自分の不甲斐なさに怒りで涙が止まらない。


「恭ちゃんに迷惑かけるくらいなら…あたしここを…」


その言葉をさえぎる様に恭一の腕の中に引き寄せられていた。


「出ていかせない、絶対」

耳元で囁く声には、普段の優しい響きよりも強く残る。


「僕はナナミの為なら何だってする。だから出て行かせないし、離すつもりもないから。」


「恭ちゃん…」

ナナミの身体を引き寄せ向かい合わせにさせ、頬を伝う涙を唇でそっと拭う。


「僕にはナナミがいてくれるだけでいい。だから側にいて…」


そう言うとコツンと額と額をくっつける。

それまで不安で一杯だった心は温かく満たされて行くのを感じた。


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