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あの子のとりこ
第6章 誤解


いつもワックスであげている前髪は降ろして、コンタクトを入れる。普段はスーツにネクタイだから、ジーンズにTシャツ、カーディガンなんてラフな格好は久しぶりだ。
大学生以来かな。


最近じゃ忙しく外に出る気もなく、だいたいネット通販で済ましていたし。

女の子は準備に時間がかかるだろうから先にマンションを出て、駅前で、待ち合わせをする事にした。


にしても休みの日ともなると街中は人で溢れている。


「恭ちゃん!お待たせ」

「!」

目の前にはピンクのシフォン系ワンピースと白いヒールを履いたナナミが息を切らせていた。前かがみになると大きく育った胸の谷間が露わになりそうだ。


「うわぁ!恭ちゃん…別人みたい!」

それはこっちの台詞だ。
柔らかい髪は横で結いあげて、細い首筋やうなじが見え隠れしている。女の子らしいふんわりとしたシルエットのワンピースは若干膝より高い位置にあり目のやり場に困る。


「かわいいけど…あちこち見え過ぎ///…」

ナナミの身体を無意識に触っていたが、こう陽の下に出ると急に自分の行動を思い出し恥ずかしくなる。

「ほら!」

すかさず自分のカーディガンを脱いで肩にかけた。
他の男からの視線を集めたくない。

「ふふっありがと///」

「手…繋いでもいい?」

「うん///」

昔は自然に手を繋いでいたっけ。ナナミの柔らかい手は昔と同じだ。ちょっと変わったと言えば、幼児の時のモチモチ感から女性らしい細く長い指が自分のゴツゴツした手に、そっと馴染む。


「それとこれ。」


「あ、携帯!」

渡された袋の中にはピンク色のスマホが入っていた。
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