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あの子のとりこ
第6章 誤解

「あ…バイト見つけてからって考えてて」

「それじゃ遅い。自由に連絡とれないし不便だよ」

ナナミの荷物の中にあった自分名義の通帳には毎月、家の両親から仕送りが欠かさず入っていたが、その金には一切手が付いていなかった。あのボロアパートも自分でコツコツ貯めていた貯金を使って住んでいた。

らしいと言ってはナナミらしいが、危なっかしくて目が離せない。

「ありがと!すっごく嬉しい!」

笑った顔は可愛い過ぎて抱きしめたくなる。そんな衝動を理性で抑えつけながら、歩き出した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「佐野!!」



駅前の側にあるショッピングモール内で、買い物を済ますと後ろから声を掛けられた。


遠目から見ても明らかにうちの学校の生徒だ。

「あ!恭ちゃん、あっちの方で待ってて!」

さすがに近くで見つかるのは、バレる可能性が高い為ナナミに促されるまま、近くの本屋に入った。


「やっぱ佐野じゃん!1人で買い物?」

声をかけてきた相手は同じクラスの秦野 悟だ。

「え…うん、そうだよ!」

「へぇ、可愛い格好してるからデートかと思った」

(デートだけど…さすがに言うのはマズイかな)


「いーえ!デート中です!」

そう叫びながら後ろから隠れてたはずの恭一が出てきた。

「ナナミいくよ!」

「あ…うん!秦野くんまたね!」

ナナミの腕を引っ張りながらズンズンと歩き出す。

「なんだ、彼氏いたのかよ」

その光景をボー然としながら秦野はその場に立ち尽くした。

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