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父と娘の近親相姦日記 April fool archive
第1章 世界の終わり。始まりの二人。
 「もう指示出しは終わってます。私の代で訓練が役に立つなんて思いたくもなかった。」
 「…まったくだ。人が地上を離れて宇宙船コロニーシップで生活するようになって2万と1136年。確かにまさか私の代で、だな……脱出シェルターは、完全なのか?」
 「水道局の連中がよくやってくれていました。大丈夫です。」

 市長は既に何も抗う術がないことを理解すると落ち着きを取り戻し、部下たちに向かって退避を指示した。

 「よし。ここはもういい。君たちも全員避難したまえ。」
 「市長は?」
 「私はもうしばらくここに残る。各国の船が一斉に降下軌道を取るんだ。脱出シェルターをしっかり管制しないと脱出した側から衝突して火の玉になりかねん。」
 「そんなのガイアに任せておけばいいじゃないですか。ていうか、市長が居たってなにもできませんよ。一緒に行きましょう。」

 他のオペレータ達が走って脱出シェルターへ向かう中、加瀬はまだそこに留まり市長を説得する。 

 「いや、それでも私は最後まで見届けてから脱出するよ。君は先に行きたまえ。」

 管制室の窓から外を眺めながら、市長は椅子に腰を下ろした。

 「わかりました。空気の流出は始まってます。完全崩壊まで5時間、人間が生きてられるのはせいぜい1時間ってとこです。手遅れにならないうちに、お早めに脱出してください。ではっ!」

 そう言って加瀬が走りさると、アラームの鳴り響く中、市長は部屋に一人残された。
 彼がモニターに目をやると、避難の進捗は22%を示しており、状況はそこそこ順調と言えた。モニターの進捗から目を離さず、市長は独り言のようにつぶやく。

 「なあ、ガイア…なんだってこんな性急なことをするんだ。これじゃあ逃げ遅れる人間だって出るぞ。」

 「最後の試練だ。生き残るべき人々には地上で繁栄するための十分なバイタリティが要求される。」

 システムガイアからの返答はそれだけで、以後彼は何も語ることはなかった。

 「そう。そういうことか。やれやれ。ご先祖様は厳しいな。…誘導班!穂土ヶ谷区の避難が遅れている!西区から人員回せ!」
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