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秘めた想い同士
第8章 日曜日
洗顔クリームを持って、洗面所に行った。

洗面所の鏡で自分の顔を見ると確かにケバい。
14才の私が、授業参観に来ているお母さん連中みたいな顔になっている。

でも、一つ感じた事は化粧の匂いが私をとてもうっとりさせたという事だった。

また、私の顔が別の人の顔みたいになっていたのも、ある意味感動した。

さて、私は水を流しながら、洗顔クリームをちょっと多めに取り、顔を洗った。

こすった手に黒や茶色や赤が付いている。

そして、水で何回も流した。顔がさっぱりしたので、たくさんのタオルがかけてあるところのタオルではなく、別においてあった黄色いタオルで顔を拭いた。
が、その黄色いタオルのあちこちに薄い茶色と黒が付いた。

げっ

まだ落ちてない。

私は、もう一度洗顔クリームを手に出して、顔を洗った。
さきほどより慎重に丁寧に。

すると先輩が、
「みお。遅いっ。いつまで洗ってるの?あ、使うタオルわかった?」

「はい。これですよね」と、黄色いタオルを指さした。

「うん。それそれ」

「なかなか化粧が落ちなくて」

「ふん。ごめんね。どうせ、濃かったです」

わ。まだ機嫌悪い。

「でも、もう一回化粧するんだから、そこまで洗う必要あるかぁ?」

「あ。そうですね」

「じゃあ、すぐにまた来て」

「はい」

水で顔を流し、タオルで拭いて、もう一度お姉さんの部屋に行った。

「次は薄めにするからね」
というと、先輩は化粧水と乳液を塗り、ファンデーションも薄めに、目元も、チークも、リップも薄めに塗った。

「よし。これでどうだ」

「あ。これも被って」
長めのウィッグだった。

「わぁ。かわいい。どこから見ても女の子だよ」
と、ブラシで髪をときながら先輩は言う。

私も鏡を見て思った。
確かに鏡の写っているのは女の子?女の人?
「え?これがぼ・」

「僕じゃないでしょ。もう頭の先から爪先まで女の子なんだから。私って言うんでしょ」
「わたし?」

「そう。わ・た・し。じゃあ、鏡で自分を見ながら私って10回言ってごらん。ゆっくりね」

私は鏡に写った女の子になった自分を見ながら
「わ・た・し」

「わ・た・し」
ごくっ。生つばを飲込む。


「わ・た・し」
あ~。本当に女の子になっちゃう。

「わ・た・し」
あ~。目の前にいるのは誰?
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