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雨の日は、君と。
第2章 予期せぬ再会
「はぁ……結局、保健室まで行くことになっちゃった」
廊下を重い足取りで歩きながら、小さな溜め息が零れる。
だって、あそこで“うん”と頷かなければ無理やりにでも高槻先生に連れて行かれそうだったし。
そうなる前にああするしかなかったんだもの。
「っ……頭、痛い」
不意に襲うズキズキとした痛み。
太い針で突き刺されるような感覚が脳髄に響き、保健室へと向かう足も自然と速くなる。
1年の教室がある2階を下り、特別教室が並ぶ1階の廊下を進む。
玄関とは真逆の方向の端まで行くと角を曲がった。
「……あと少し」
渡り廊下のような二つの校舎の繋ぎ目は日当たりが良く、初夏を感じさせる太陽が窓から暖かく降り注ぐ。
その陽光の眩しさに手を額に翳しながら、ふと“彼”の顔が思考の隅でチラつく。
雲がほとんど無い晴天。
雨の降る気配は微塵もない。
だから、今日はきっと彼に会えない。
「…………」
寂しさに似た複雑な感情が一瞬胸の内で芽生えたが、私はそれを早々に摘み取ってしまう。
そして“保健室”とプレートが提げられた扉の前にたどり着いた。