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雨の日は、君と。
第3章 彼の熱と名前

舌先が口内を這いずり回る感覚まで思い出しかけて、
……い、いやいやいや!
「アレはあくまでも治療であって、彼は熱で朦朧としてたんだもの……! あっ…!」
誰へ向けたものでもない言い訳を口にしながら、勢いよく布団から起き上がる。
そのせいで、手にしていた生徒手帳の存在を一瞬忘れてしまった。
手のひらから床へと転げ落ちる、生徒手帳。
「私は、一体誰に言い訳してるのよ……」
初めてのキスでもあるまいし。
いいえ、そもそも治療の一貫なのだから。
……などと自分に言い聞かせながら、開いて床にひっくり返しになってしまった生徒手帳を拾う。
「あ……」
そこで今更ながら気付く、顔写真の横。
初めて目にする、彼の名前。
「篠崎 譲……」
しのざき、ゆずる。
もしかすると、違う読みの可能性もあるけれど。
漢字の並びからして、ほぼ間違いはないと思う。
「篠崎…譲くん……か。……あ、2年生…だったんだ」
名前の下には生年月日と、進学科2年A組と記されていた。

