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雨の日は、君と。
第1章 プロローグ

“にゃあ”と猫は彼の手から離れ私の元へとやって来ると、甘えるように鳴く。
愛らしいその仕草に口元が更に緩まる。
黒くふわふわとした毛並の頭や顎の下を撫でてやりながら、私はおもむろに彼に話し掛けた。
「最近は雨ばかりだから、よく会うね。もうそろそろ梅雨の時季かな」
「ん……そうかも。コイツも一回り……いや、二回りぐらいはでかくなってきた気がするし」
私が撫でている横からポンポンと軽く背中を叩く。
ちらっと横目に彼を見ると、優しく慈愛に満ちた眼差しが前髪から見え隠れしていて一瞬ドキリと胸が弾んだ。
けれど、そんな感情が波立つのもつかの間。
彼から視線を再び猫に向けると、感慨に耽ってしまう。
あぁ……そういえば、彼と出逢ってから2ヶ月位にはなるのか。
まさに今しがた生まれたばかりのような仔猫で、弱々しかったこの猫ちゃんも私達と同じだけの時間が経過している。
言われてみれば、細身だった体も大分ふっくらとして、丸くなった気がする。
「本当なら、俺ん家で飼ってやりたいんだけどなぁ……俺の母親、猫アレルギーで駄目なんだよね」
「そっか。私の家はペット禁止のアパートだから……ごめんね、猫ちゃん」
せめてものお詫びに、目一杯猫ちゃんの顎の下を擽ってやるとゴロゴロと嬉しそうに喉を鳴らしていた。

