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雨の日は、君と。
第1章 プロローグ

コホンと咳払いをひとつ。
ここは冷静に、大人の対応が一番最適だろう。
「エロい想像なんてしてません。第一に良い大人を子供がからかうもんじゃありません」
「俺、そんなにガキじゃないと思うけど?」
「……っ」
傘と傘が重なり、吐息が触れる程に急に顔を寄せられる。
彼は時折、不意に大人びた表情を見せる。
それに胸が少しもときめかないのかと問われれば嘘になるが、私の中の理性とも言うべき半端な大人の部分が。
行動に移させた。
一歩、彼から距離を取る。
「……からかわないで。それよりもほら、もう夜も遅いし。君も早く家に帰った方が良いわ」
傘を傾けて顔を隠し、彼を拒絶する。
――傘があって良かった。
そのお陰で彼の顔を見ずに済むし、自分の動揺も悟られない。
……私達は、互いの名前も年齢も知らない。
見た目だけで判断した限り、彼が私より年下なのは間違いないけれど。
彼の母親が猫アレルギーだってことも、今日初めて知ったぐらいに。
私達の距離は曖昧だ。
でもこの位の距離が一番落ち着くし、居心地が良いから。
だから、私は見てみぬ振りをする。

