この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
雨の日は、君と。
第1章 プロローグ

「あーあ、フラれちゃった」
本気か、冗談なのか。
区別は付かない態度で彼もまたあっさりと流す。
ただ、ほんの少し。
寂しそうな色合いを瞳に宿す。
それを傘に隠れるようにしながら、こっそりと盗み見ていた。
「おねーさんに言われた通り、子供は大人しくお家に帰ります」
ちょっぴりと嫌味のエッセンスを交えた口調でそう言うと、彼は傘をダンボールに立て掛ける。
そしてそのまま立ち上がった。
「じゃあ、またね。おねーさん」
「うん。でも毎回思うんだけど、傘が無くて大丈夫?」
「平気。俺ん家、本当にすぐそこだから」
雨を受けて振り向き様にそれだけ言うと、軽く手を振り足早に立ち去って行った。
雨の水溜まりを弾く彼の背を見送ってから、私も腰を上げた。
「またね、猫ちゃん」
上目遣いにこちらを見る頭をひと撫でしてから、漠然と思う。

