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雨の日は、君と。
第1章 プロローグ
 

「あーあ、フラれちゃった」


本気か、冗談なのか。

区別は付かない態度で彼もまたあっさりと流す。

ただ、ほんの少し。

寂しそうな色合いを瞳に宿す。

それを傘に隠れるようにしながら、こっそりと盗み見ていた。


「おねーさんに言われた通り、子供は大人しくお家に帰ります」


ちょっぴりと嫌味のエッセンスを交えた口調でそう言うと、彼は傘をダンボールに立て掛ける。

そしてそのまま立ち上がった。


「じゃあ、またね。おねーさん」

「うん。でも毎回思うんだけど、傘が無くて大丈夫?」

「平気。俺ん家、本当にすぐそこだから」


雨を受けて振り向き様にそれだけ言うと、軽く手を振り足早に立ち去って行った。

雨の水溜まりを弾く彼の背を見送ってから、私も腰を上げた。


「またね、猫ちゃん」


上目遣いにこちらを見る頭をひと撫でしてから、漠然と思う。

 
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