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二人の密会
第10章 本能
「ハァ~~、ハァ~~、ハァ~~」

「俺の呼吸に合わせるんだ」
唇を再度合わせて 

「唇が離れたら息を吸え、いいな」
雌犬は頷いて唇を閉じて待ってる

「口を開けて息を吸え」
吸い切ったところで唇を合わせる
唇を放して

「息を出して吸え」
それを繰り返すと落ち着いてきた
雌犬は目を開け、呼び戻された最後の瞬間の姿を見た

「なんか凄い事になってるけど」

「ああ。雌犬がこうしたんだ」

「ん? 覚えてないけど」

「正体がわかったら、怖くはないが、厄介だぞ」

「意味が分からないんだけど」

「録画を最後まで撮ったから見ろ」

「長いの?」

「断片的になる。所詮携帯の録画だらな」

「だったら、最後から遡ればいいの?」

「俺の苦労を無駄にする奴だな」

「ごめんなさい」

「構わんよ。長いし、とにかく最後を見たいだろうしな」

「うん」
雌犬とベッドに入り、抱き合いながら見ている
ストッパーが外れた瞬間の詳細を説明しながら、最後のツッコミまでを見た

「なんとなく分かった気がする。雌犬に心当たりあるだろ?」

「考えてるけど、分からない」

「二人の時、殆ど俺が喋って雌犬は返事する。それは雌犬が言いたい事を我慢してるって事だと思った。何で我慢してるのか分からないが、遠慮してるなら必要ない。言いたい事を言えば通じる。黙っていれば分からない。爆発させる一つの原因」

「まだあるの?」

「雌犬は遠慮から話さなくなった事があるんじゃないのか?」

「必要最低限は話してるよ」

「それでは、不必要な話はしてないって事か?」

「そう言われてもね」

「思うに、初体験の男と俺。共通点を考えてみた。答えは極度の緊張だろうと。初体験は何となく分かるだろ? 俺には緊張と恐怖と興奮かな? 自分を隠す為にストッパーを外して、違う人格を演じる。隠すキャパシティが大きい程、演じる人格も変わる」

「俺はセラピストじゃないし、精神科医でもない。信じるかどうかは雌犬に任せる。自分としては的を得てると思ってる」

「うん」

「俺は雌犬を俺色に代える事に猛進してきた気がする。雌犬の事、何も知らなかったんだと。性格や好きな色や食べ物、趣味にまで知らなかった。聞かないから雌犬からは言わないよな。私の躰しか興味がないと思ったのかも知れん。すまん」
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