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冷たい月を抱く蝶
第3章 偽りの家族の肖像

たしかに私は生まれた時から、不幸な人生ばかりを送ってきた。
でも、もしそれが彼の言う通りだったら私は彼に出会う為に生まれて来たのかも知れない…――。
だって彼はこんなにも優しい。
そして私を心から愛してくれるし、叱ってくれる。
もし私は生まれて来なかったら、こんな思いを感じることも出来なかった。
何故だかその時、両目から涙が溢れた。お義父様の言う通り。生まれて生きてることは奇跡なのかもしれない。
彼に言われるまでそれすら考えたこともなかった。
そして自分が生まれて来た奇跡さえも…――。

