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裏切る体
第2章 はじまり
 「さあて、そろそろ自己紹介しておこうか?」まるで私自身に問いかけるかのように私の声が言う。
「あぁ、そうか。心配すんな。心の中で念じれば俺にだけはお前の声は届く。さ、聞きたいこと、なんでも聞いてみな。」念じれば…。
(あなたは一体誰なの!?)あらゆる疑問の中でも真っ先に聞きたかったこと。
「ん、俺か。別にあんたの別の人格とかそんなんじゃねえ。俺はな、お前に憑依させてもらってる単なる男だ。」殆ど回答になっていない。それに、状況は更に悪くなったと言える。だって。
(お、男の人!?男の人が…なんで!)
私は今、見知らぬ男に操られ、痴態を眺められ、感覚を共有させられているのだ。
「なんでって、そりゃ女の体が気持いいからだよ。後はまあ、暇つぶし?」ニタリ。私の顔が邪な笑みを浮かべたのが伝わってくるのと同時に胸部に痛みが走る。私の手が胸を乱暴に揉んだのだ。
(痛い!やめてよ!)
「やめてもなにもお前の体なんだろ?」
(じゃあ、出て行ってよ!)
「出て行け?ふーん、分かった。他ならぬ宿主様の願いなら仕方ないな。」スクッと立ち上がる体はドアに寄ればノブに手をかける。
「じゃ、出て行くぜ?」
(そ、そんな!やめてよ!私の体から出て行ってよ!)
「なんだ、そんなことかよ。つまんねえな。まあいい。俺とお前の体でたっぷりと楽しいことを教えてやるからな。」男のものへと寝返った体が、男と一緒に私を嘲笑っていた。
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