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裏切る体
第2章 はじまり
 ぴたりと体が動きを止める。明日の準備も終わって後は寝るだけっていう時である。おかしいな、金縛りってやつなのかな。なんとか動こうとすること30秒。ようやく体が動き出す。さあ、明日に備えてもう寝ないと。立ち上がり、ベッドへと向かう…はずだった。立ち上がった私の体は手を握ったり、開いたり。足首を振ってみたり。一向に寝床へと向かわない。そこに私の意思は存在していない。
「な、なによこれ!?」思わず叫ぶ。
「誰か助け。」助けを求めようとする私の口が閉じる。閉じた口がにんまりと歪んでいくのが分かる。
「へえ、これが俺の体か。」私の口から、私のではない言葉が発せられる。
(何よ…!何なのよ!)胸中で叫ぶことしかできない私を他所に私の手は胸部を撫で上げる。
「ははっ、取り憑いてまず最初にやることと言ったらこれだよな。」円を描くように胸を揉む動作。ゾワゾワとしたものを感じるが決して快感ではない。寒気だ。勝手に体が動くことに対して恐怖を抱いている寒気だ。
「んっ…。もどかしいな。まあ、それがたまらないんだけどな。」自分自身の体から受ける、強姦。恐怖に、悔しさに涙を流そうにも私の体は私の感情もまるで反映しない。

ただ、自分の痴態を眺めるしかない状況に私は絶望するしかなかった。
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