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【マスクド彼女・序】
第3章 一日目【彼女との戒律(ルール)】

「初め……て?」


「はい」


 唯は、静かに頷いた。


「でも、それも当然のこと。長らく他人との関わりを絶ってきた――それが、私であるのだから」


 そう話した声は、淡々とするが故に――却って、哀しげに響く。


 正直は、ふと思い浮かべた。それは、この勝負を始める前。



『これは――罪を科する為に』



「……」


 唯がそう言っていた意味は、それを終えた今もわかりはしない。彼女の言動は多くが謎めき、その全てが整合性を以って語られているものなのかすら、まるで定かではなかった。


 それでも――


 初めてのキス――その名に於いて――正直に、罪を科する。


 正直の脳裏で、それは自然と繋ぎ合わされ。理解が及ばなくとも、言い様のない『重さ』を其処に残した。


 何故――と、今はその意味を求めるものでなく。


 只――何かの目的として果たされた『初めて』は、やはり虚しく痛烈に哀しくも思えた。


 そして、正直には気にすべき、もう一つの事象が。



「キミの顔…………傷跡って……?」



 とても恐る恐ると、正直はそう訪ねている。
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