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【マスクド彼女・序】
第3章 一日目【彼女との戒律(ルール)】

「ふ・ふ……」


 何かを見越したように、唯は笑っていた。

 そして――


「キスの前――」


「え?」


「正直さんは、私の顔を――どの様に、想像されたのでしょうか?」


「それは……」


 虚をつくような問いに、正直は戸惑う。


「儚く可憐であり、美麗――だと、するのなら。私にとって、それこそは――邪推」


「じゃ、じゃあ……顔の、傷は?」


「さあ……。重要なのは、寧ろ……正直さんが、どう感じていたのか」


「どうって……」


「私とのキスが、不快だったのではないですか?」


 厳しくそう訊かれ、一瞬の間をあけ正直は答えた。


「それは……違う」


 すると唯は、すっと口元の笑みを消し去る。それから暫く、正直をマスクの目でじっと見やった。


「嘘……です」


 えっ――どっち、が? と、それを口にする間もなく。


「今日は、これにて――お休みください」


 唯はそう言って、正直にその背を向けた。

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