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【マスクド彼女・序】
第4章 二日目・三日目【微弱な引力の作用】

「まあ、ともかく――気になるなら、新垣さんが電話したらいい」


 不意にそう言われ――


「私が……?」


 璃子は、ふとあの夜の電話のことを思い浮べた。


『彼には、これより二週間――私との契約を優先してもらうことになります』


 それは正直の電話に出ていた、女の声が話した言葉。


 契約……?


「……」


 璃子はじっと、その意味を考えている。


 すると、それを傍目で眺め、三嶋が訊く。


「新垣さんにしても、『単なる』ゼミの後輩。別にそんなに思い悩む必要は、ないと思うけどね」


「え……?」


「そのチラシは、見ての通り只のゴミ。いらないなら、俺がその辺に捨てておこう」


 と言うと、三嶋は右手を差し出した。


「……」


 三嶋に何かを試されているのは、何となくわかっている。自分の真意を垣間見せるのは、やや癪でもあった。


 しかし――璃子はチラシをギュッと握り締めて言う。


「結構です。これは私が、お預かりいたします」



 それを聞いた三嶋は、決して嫌味な風もなく愉快そうな笑みを浮かべていた。

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