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【マスクド彼女・序】
第4章 二日目・三日目【微弱な引力の作用】

「ゲーム?」


「ええ。とは言っても、単なる思いつき。大層なルールも、ありませんが――」


 唯はそう話しながら、将棋盤から落とした駒を両手で集めた。そして山となった駒の塊を差し、正直にこう促す。


「どうぞ――適当に幾つかの駒を、手に取ってください」


「?」


 何を始めようというのか、意図する処もわからなぬまま。それでも正直は言われた通りに、右の掌で駒を特に選ぶこともなく掴み取った。

 それを見ると、次いで唯も同様に幾つかの駒を手にしている。その数は定かではないが、互いに手にした駒は、たぶん四つか五つ……。

 そして、唯は自らが取っていた一枚の駒を示し、こんなことを言った。


「ご存知のように、将棋の駒には表裏があります。例えばこの駒なら、表に黒い文字で【歩】と、裏には赤い文字で【と】とそれぞれ記されています」


「うん……それが?」


「黒を男、赤を女――と、しましょう」


「男と女……?」


「はい、つまり――このエデンでは、正直さんと私を示すことになります」


 唯はそう言いながら、今は真っ新と平らな将棋盤を指差す。


「今、手にした駒を二人が同時に、この上に降り出します。その結果、黒と赤どちらが多いのか――その様な、とてもシンプルなゲーム」


「たった、それだけ?」


「はい」


「それで一体、なにを決めるの?」


 黒と赤。すなわち、正直と唯。駒を振った結果を受け、勝敗を決するようだが……。


「振った駒を、神判とし――敗れし一方が、とある罰を受けるのですよ」

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