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残像
第7章 別離
鷺の提案により、市九郎は墓を作らず荼毘に付して川に流すことにした。

それは、市九郎らしい、と、皆が思った。

人を一人、灰になるまで焼き尽くすには、相当量の薪が要る。
それは八尋が、手下とともに調達した。薪を手配し終えたのはすでに夕刻だった。

鷺は信頼の置ける手下に小金を握らせ、市九郎の遺骸をひと気のない河原に運んでいた。

薪で櫓を組み、布に巻いた市九郎を寝かせて更に薪を積む。
風向きと音と臭いで、鷺は的確に薪を足すべき箇所を読んだ。
薪を足すのは赤猫と八尋がやった。

兵衛は河原に座り、干し芋を齧りながら無言でその様子を見守った。

焼ける臭いも強く、表現しがたいもので、その中でよく物を食おうという気になるものだ、と八尋は感心したが、そこが兵衛らしいとも言えた。

火が落ち着いている時には、各々しんみりと押し黙る。
市九郎との思い出に浸り、胸の内で語りながら過ごした。





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