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残像
第7章 別離
夏の夜は短い。

まる一晩かけ、ポロポロとした骨か灰かわからぬものを火箸で拾えるようになった頃には、もう日が高くなっていた。

焼けた骨を流し終え、さてこれからどうするか、となった時。

鷺は解散を口にした。

兵衛も賛同する。

八尋は寝耳に水ではあったが、市九郎亡き組織に、皆を縛る理由がないのもわかった。

鷺が突然、

「八尋は猫ちゃんの側に居てやんなよ」

と言い出した。

鷺は、ひた隠しにした赤猫への思慕も見抜いており、これからは赤猫と、赤猫の腹の子を市九郎の代わりに守れ、と言った。

「お腹の子って…」

思わず赤猫の顔を振り仰ぐも、赤猫はとんでもない、という風にかぶりを振る。

鷺はニヤッと笑って。

「俺の勘。でも、多分いるよ。市サンの忘れ形見がね。俺の勘、当たるんだ。期待して待ってて?じゃあねぇ〜」

何処に行くものやら、鷺は軽やかに手を振り、杖を頼りに歩いて行った。

兵衛も、兵衛らしい言葉を残し、ゆっくりと離れて行く。

そして、河原に赤猫と二人が残された。
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