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お礼の時効
第2章 今ならあなたに言える、愛してますと
昨日の出来事を思い出してみる。
浅野に後ろから抱きしめられて、そのまま吸い込まれるように唇を重ねた。
浅野の乾いた唇がかすかに動き、それにぞくりと震えてしまった。
角度を変えて何度も唇を重ね、浅野の舌が唇を割り開いた時自分のスマートフォンの着信音で我に返った。

春季は浅野の腕を振りほどき、バッグをつかんでそのまま浅野のマンションから走り出た。
あのままスマートフォンが鳴らなかったら、どうなっていただろう。
恐らくそのままベッドに行ったかもしれない。
キスの先を知らない子供じゃあるまいし、こんなことで動揺している自分が情けなかった。

自分の唇に残る浅野の乾いた唇と、割り開かれたときの舌の感触がよみがえる。
春季は目を閉じて頭を振った、今更考えてもせん無いことだ。
できればこのまま浅野と顔を合わせなければ、いつもどおりの静かな毎日にもどるだけ、それでいいと思うと春季は少し気が楽になった。

そう仕事以外の接触さえしなければいいのだと。

風呂の湯がたまったことを知らせるベルが鳴った、春季は浴室へ向かい全ての下着を脱ぎ捨てていた。
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