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お礼の時効
第2章 今ならあなたに言える、愛してますと
春季が仕事を終えて、自分のマンションに戻ったのは深夜0時を過ぎたころだった。

公判を控えた事件を抱えると、自分の時間など全くなくなるといっても過言ではない。
春季の現状に呆れた大学時代の友人から、自分の会社の企業法務の部署へこないかと誘われているが、悩む時間さえなかった。

スーツを脱ぎ下着姿のまま浴室のボタンを押してお湯を張る、浴槽に湯が溜まるまでの間に簡単な食事を作りそれを食べる。このルーティンワークはここ数年変わっていない。
皿に盛った野菜炒めを食べながら、ビールを飲む。喉を滑る泡の感触にやっとひとごこちついた。

肩の力が抜けると、とたんに浮かぶのは浅野のことだ。

嫌じゃなかった……

一ヶ月前に再会しそのまま告白されて、昨日は抱きしめられ唇を重ねた。
そっと自分の唇に触れると、とくんとくんと心臓が鳴り響き、胸の奥がじんわり温かくなった。

もしかしたら久しぶりのキスで、自分はおかしくなったのかもしれない。
最後のキスはいつだっただろうか、あれはもう4年前のことだ。
春季はその後恋愛に見向きもせずに仕事に励んでいた。

思えば恋愛とはほぼ無縁の学生時代だったし、その後も同じだった。
初めて男と肌を重ねたのも大学を卒業したあとで、その男と数年付き合ったが結婚までは進展しなかった。
その男とは司法修習で出会い、弁護士同士になったあとも付き合っていた。
同じ弁護士同士だとどうしてもすぐに結婚を意識せざるを得ない、相手の男は口では共働きを認めていたものの、結局は家庭的な妻を求めてきた。自分には向かない、家庭的ではないのだから。
何よりもっと学びたいし、やりたいこともあった年齢だ、だから別れを告げた。
その後その男は家庭的な女性と結婚し、今では幸せに暮らしていると聞いた。
もしあの時自分の夢を諦めてその男の手を取っていたら、それは幸せな未来になっただろうか?

もしあの時こうしていたら?春季は自嘲してしまった。
こんな後ろ向きな考えをしている自分に呆れてしまう。
今の自分を否定するつもりはないし、過去の決断も全て自分が選んだことだ。

恋愛にしろ結婚にしろ、いまの自分にとって煩わしいことに違いはない。
特に恋愛に関しては、結局行き着くところは結婚だ、そうなったときまた自分が我慢させられることが嫌だったし、それで傷つくことが怖かった。
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