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お礼の時効
第4章 せっかく捕まえたと思ったら、逃げられたんです
「起きてますか?」

頭上で浅野の寝起きの声が聞こえてきた。
声を出そうとするが昨夜散々啼いたあとだ、喉が痛いので春季は頷いてそれに答えた。

「昨夜はその……同意を頂けないうちに……ですね……」

しどろもどろになりながらそれでも一生懸命何かを伝えようとする浅野に、春季はたまらなく愛おしさを感じてしまった。とくんと心臓が跳ねる。

浅野の首に腕を絡ませ、体を伸ばし唇に音をたてて吸い付いた。
ちゅ、と音がなった次の瞬間、浅野の唇を食むと体がびくんと跳ねた。
男がそんな反応をしたところなど、春季は今まで見たことがない。

浅野の腕の力が強くなった、このままではまた始まる。春季は手で浅野の体を押しやって浅野から離れた。

「春季?」

掠れた声で浅野は春季の名を呼んだ。後ろ髪を引かれる思いとはこういうものかと春季は思った。
ベッドから出ようとする春季の体を浅野は抱きしめてきた。

「もう少し、ここにいてください……」

浅野の息がうなじにかかり、春季はぞくりとした。昨夜の残り火が残っているかに燻り始めている。
春季は浅野の腕を振りほどき、そこからするりと逃げた。

「だめよ、帰るわ。仕事があるの」

浅野の顔を見ずに春季は着替えて部屋を出た。
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